2025
2025年ヴィンテージのテーマは「甲斐絹(かいき)」です。
江戸時代から昭和初期にかけて、山梨県で生産されてきた甲斐絹。非常に軽く、平滑な生地でありながら、腰もあり、独特の光沢やさらっとした風合いが特徴です。「先染め・細番手(細い糸を使う)・高密度」という特徴を持ち、とりわけ羽織や着物の裏地に用いられてきました。
第二次世界大戦後は、洋装化・機械化にともない甲斐絹は姿を消してしまいましたが、今、伝統文化資産として復活へと動いています。
本年は、山梨県産業技術センターの協力のもと、甲斐絹の魅力をお伝えします。
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絵甲斐絹「柳桜」
大正3(1914)年頃に製作された絵甲斐絹の一部です。モチーフには、素性(そせい)法師の歌
見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける
(『古今和歌集』)
が用いられています。柳の緑や桜の色が織り交ざる、都の春を「錦」にたとえたこの歌の世界が、図様として丁寧に織り上げられています。
本作は、縦糸に絵付けを施しながら織り進めるという、きわめて高度な技法によって制作された一点です。
これを羽織の裏地に仕立て、花見の席に臨めば、ふとした拍子に裏地がのぞき、見る人に歌の情景を思い起こさせます。
機知に富んだ趣向を通して、和歌の教養を共有する。当時の人々のあいだには、そのような粋で洗練された文化的交流が息づいていました。
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絵甲斐絹「忠臣蔵〈赤垣源蔵徳利の別れ〉」
織り機に仕掛けた縦糸に、絵付けを施しながら織る技法の「絵甲斐絹」より。大正2(1913)年頃に製作された絵甲斐絹「忠臣蔵」より一部を抜粋、天地を反転し、エチケットを作成しました。
下部のストライプが現代的なデザインで、その下のプリミティブな佇まいの徳利とコントラストをなしています。これを抜き出し、マット銀で囲むことで未来感を演出しています。
絵甲斐絹の表現に、マーク・ロスコのような現代的な抽象表現との親和性を見出したエチケットです。


画像提供:山梨県産業技術センター
参考資料:甲斐絹ミュージアム https://www.pref.yamanashi.jp/kaiki/
エチケットに使用された画像は、山梨県産業技術センターに所蔵されている明治~昭和初期の甲斐絹生地見本のアーカイブから選ばれたものです。