KYOEIDO WINE

エチケットとアート

2021

2021年のテーマは「印章」です。印章とは「はんこ」のこと。私たちがよく使う「印鑑」とは「印影(紙に押した際に残る朱肉のあと)」を指しています。
共栄堂ワイナリーのある山梨県は、印章の生産量が全国一の産地。その歴史は、御岳山系で良質な水晶鉱が発掘された文久年間(1861〜64)から始まります。現在も、峡南地域の六郷(市川三郷町)では、町の基幹産業として印章業があり、多くの篆刻家・印章彫刻士を擁しています。
今回は、六郷印章業連合組合「対岳堂印房」の小林成仁様に彫っていただいた印章のエチケットをお届けします。手彫印章の印影をワインとともにお楽しみください。

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「画竜点睛」 『歴代名画記』より 青田青白章 60mm角
南北朝時代の名画家、張僧繇が武帝の命により寺院に竜の絵を描いた。その竜に瞳を描き入れたところ、たちまち飛び去ったという話に由来する成語。物事を完成させるためには最後の仕上げが大切だということを、「ものを作る者としては忘れてはならない」と、今ヴィンテージを締めくくる印章エチケットの言葉として採用した。
文字は金文(きんぶん:殷・周時代の青銅器などによく見られる、甲骨文字以降の書体)。文字の上に竜を配し、竜が天に昇る様を描いた。文字、絵とも、刀の切れで鋭さを表現している。

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「胡蝶之夢」 『荘子(斉物論)』より 青田石 75mm角
中国、戦国時代の思想家・荘子が胡蝶(蝶々)になった夢を見たという故事より。夢と現実の区別がつかなくなったという話より、万物一体の境地に至る。故事成語としては「人生は夢のようである」から転じ、人生のはかなさのたとえとして用いられる。
文字は小篆(しょうてん:秦の始皇帝が定めた公式の書体。各地方の文字を統一して制定された)を用いて、筆の動きを意識した字形にした。古来、印章には様々な文様を彫ることがあったので、蝶を彫るというチャレンジをしてみた。蝶は人が変形した様な形にして、文様はあまり現実的でないように考えた。

◎プロフィール
小林成仁(コバヤシ・シゲヒト)

一級印章彫刻技能士 日展作家 やまなしの名工
1954年山梨県生まれ。父の後を継いで印章彫刻士となる。印章彫刻の傍ら、篆刻家の故二葉一成氏に師事し、以降20年あまり展覧会に出品を果たしている。
現在は「対岳堂印房」代表として、印章彫刻のほか、落款印等の制作、篆刻教室での指導をしながら、自身の作品制作を続け、篆刻を楽しんでいる。
対岳堂印房
https://taigakudoinbou.wixsite.com/taigakudo